ブログ - ハーモニー通信

HARMONY PRESS 連載バックナンバー(2)

2010年11月28日 日曜日

School of Vet 「麻酔」の第2回です。
                                                                                                      
前回は麻酔に対しての概念的なお話をしましたが、今回から麻酔の歴史について触れてゆきたいと思います。
麻酔の歴史は医学の発展と呼応するものでした。それは、痛みという刺激自体から逃れたいということが医学の第一歩だったからです。しかし、痛みからの開放は、必ずしも麻酔薬に頼ることではなかったはずです。麻酔薬が開発される以前から、当然医師は存在し、その起原は遡れば原始社会にまで至るでしょう。そこで行なわれていた医術は決して科学的なものばかりではありませんでした。呪術や祈祷といった手段に頼っていた時代が随分長かったことでしょう。しかし、偶然にしろ、麻酔薬として後年用いられることになるような物を、紀元前から使用していた記録があります。たとえば、大麻は古代ギリシャやエジプトで手術の際に使用されていました。他にもコカの葉は南米のインカ帝国での使用歴があります。その他チョウセンアサガオからは華岡青洲が通仙散を開発したことは前回ご紹介した通りです。また、ヨーロッパに自生していたベラドンナという植物からは、鎮静鎮痛作用はないですが、麻酔処置に必要な薬剤のアトロピンという成分が含有されており、女性の美容目的で点眼薬として使用されていました。このように、他の薬効成分と同じように、麻酔薬の多くは薬草から抽出され使用されていたようです。化学合成された麻酔薬として最初のものはジエチルエーテルという、揮発性が高く、引火性も高い物質でした。華岡青洲の通仙散開発の40年以上も後のことだったらしいです。
                                                   
以下、続く。。。