ブログ - ハーモニー通信

豚コレラ、その先の恐怖。。。

2019年3月1日 金曜日

院長です。落っこちの院長です。ブログの担当が4週程度抜けました。すみません。
2月のトピックとして、社会に大きく報道されたことの一つに、愛知県豊田市と田原市で実施された養豚の殺処分があります。原因は豚コレラウィルスに感染した野生のイノシシが岐阜県内で発見され、それが養豚農家に感染拡大。さらに飼料輸送車を介して愛知県を含む他府県に感染を拡大してしまったのです。感染拡大を防ぐための殺処分、これは獣医師でないと実施できません。田原市では1万頭を超えるブタを処分する必要があり、短期間で行わなくてはならないのですが、本来、この殺処分に従事する獣医師は県や国の職員や大動物を診療対象にする獣医師なのですが、それでは人数が足りません。そこで、なんと、愛知県獣医師会を通して、私のような小動物を診療対象とする獣医師にも出動要請がありました。当院は開業して23年を迎えますが、いまだかつて、そのような出動要請があったことはありませんでした。現場での余程の人手不足だったのでしょう。
私の同期の獣医師で農林水産省に勤務して動物検疫に従事している女性獣医師がいますが、彼女はさすが国家公務員だけあって、宮崎県の牛に発生した口蹄疫、そして8年前の東日本大震災後、立ち入り禁止区域で取り残された牛の殺処分に出動しています。しかし、私のような動物病院獣医師にはこのような経験はなく、今回の豚コレラ感染問題で初めての出動要請が出された時は戦慄を覚えました。それは、これから先、このような家畜伝染病が蔓延することを防ぐ必要があるときには、容易に出動要請が出る、ということになるわけです。
今回の豚コレラは豚やイノシシなどに感受性があるウィルスなので、人間には感染しません。人間が感染した豚からの畜産食品を食べても感染することはありません。しかし、もし、人と動物に共通する感染症が蔓延するかもしれないとなった時、その日のことを考えてしまいました。
もっとも最悪のケースは、狂犬病が国内で発生した場合です。狂犬病については、人を含むあらゆる哺乳動物に感受性があるウィルスで、さらに厄介なのは感染そして発病した場合、ほぼ100%死亡する、きわめて危険なウィルスなのです。インフルエンザウィルスに比べてはるかに強毒なのです。
日本は島国が幸いして、隣国から狂犬病ウィルスに感染した動物が入ってくることは難しい清浄国です。しかし、つい50年前は日本国内でも狂犬病は蔓延していたのです。それが清浄国になれたのは、徹底した野良犬の排除と、他国からの侵入を防ぐ動物検疫の確立、さらには狂犬病予防法に基づいた、飼育犬への狂犬病ワクチンの接種の義務化とそれをきちんと実施してくださった、愛犬家の皆さんがいたからです。
しかし、それでいても、いまだ狂犬病の脅威は大きく、いつ、国内に入ってしまうかわからないほどの、すぐそこにある危機なのです。それなのに、狂犬病ワクチンの接種率は全国的に年々下降しているそうです。
もし、仮に愛知県内のどこかで狂犬病ウィルスに感染んした犬が発見されたとしましょう。日本にはすでに野良犬はいません。野生の犬などは大昔に絶滅しています。したがって、発見された狂犬病感染犬は、どこかの段階で人との接点があった可能性が高いことになります。狂犬病ウィルスは感染動物の唾液中に多く存在し、噛まれることにより感染が成立します。うっかり感染した犬に噛まれでもしたら。。。。
もしそんな事態になった場合、その感染犬を何としても捕獲しなくてならず、さらに捕獲された場合、その周辺で飼われているワンちゃんは全て感染していないかの検査対象になります。おそらく、私たちのような動物病院の獣医師がその検査にあたることになります。もちろん、その検査の前には私たちは狂犬病ワクチンを接種してから行いますが、狂犬病ウィルスの封じ込めのために、私達は身を感染の危険にさらしながら行わなくてはなりません。さらに、もし、ワンちゃんが不幸にして狂犬病ワクチンを接種していないおかげで感染してしまっていた場合、その時、そのワンちゃんは殺処分となるのです。
毎年の愛犬家の義務である狂犬病ワクチンの接種。今年も4月から一斉に行われます。なぜ、そのようなワクチンを接種しなくてはならないか、しっかり心に留めて今年も狂犬病ワクチンをみなさんの大切なワンちゃんに接種してあげましょう。
今回の豚コレラウィルス感染が問題となった頃、私は久しぶりに「アウトブレイク」という、ダスティンホフマン主演の映画のDVDを観ました。それはアフリカのウイルス性出血熱が密輸された猿を介してアメリカの地方都市で爆発的に感染拡大したというフィクションです。しかし、全く起こりえないことではありません。
またまた、長々と、そしておもーい話にお付き合いくださり、ありがとうございます!