HARMONY PRESS 連載バックナンバー(3)
2010年11月29日 月曜日
School of Vet 「麻酔」の第3回です。
さて、前回は原始的な麻酔として偶発的に発見された、あるいは伝統的に使用されて来た薬草などからの抽出物をご紹介しました。鎖国状態にあった日本で華岡青洲が通仙散という麻酔薬を開発し、世界ではじめての乳癌摘出手術を行なったことは毎回ご紹介していますが、それより約40年程度後に吸入麻酔薬が開発されました。今回はそれ以降の吸入麻酔薬等現在も使用されている麻酔薬をご紹介します。世界ではじめて用いられた吸入麻酔薬はジエチルエーテル(エーテル)で、アメリカで使用されました。首にできた瘤の摘出に用いられました。しかし、1700年代に、実は吸入麻酔薬は開発されていました。それは、亜酸化窒素という物質で、笑気とも呼ばれています。発見された時は麻酔薬と言うよりは、気分を高揚させるために使われていたらしいです。この笑気ガスは現在でも全身麻酔薬の裏方として使用されていますが、強力な温室効果ガス作用や使用後の不快感などから、他の麻酔薬を用いる傾向にあります。エーテル開発の直後の1847年にはクロロホルムの臨床応用が発表されました。さらに、イギリスのヴィクトリア女王の出産時の分娩痛をクロロホルムで取り除いたことにより、産科分野を中心に利用されることになりますが、肝毒性が強いため現在では麻酔薬としては用いられていません。なお、ミステリー小説やテレビドラマで、ハンカチなどにしみ込ませて被害者にかがせ、意識を失わせる場面がよくありますが、瞬間的に意識を失わせることは不可能に思えるのですが、やはり専門家も同様の意見で、せいぜい咽せる、頭痛を覚える程度だろうということでした。
以下、続きます。。。